新型コロナウイルス問題⑧ 𠮷野家の取組みに学ぶ攻めのマーケティング

𠮷野家の取組みに学ぶ

Author:林 秀樹 Hideki Hayashi
1972年生まれ、福井県出身。名城大学卒。遊技機販売商社勤務を経てパチンコ店経営企業へ。
エリア総括部長・調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。
2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな機械整備技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。
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■ 素早い仕掛けで浸透


 
𠮷野家が仕掛けました。
 
2020年4月1日11時~4月22日20時までの期間中、吉野家では牛丼、牛皿、牛皿ファミリーパックの全サイズを全品15%オフで販売しています。
 
【4月1日~4月22日】テイクアウト牛丼・牛皿15%オフキャンペーン!
 
新型コロナウイルスの影響から最近は店内飲食よりも持ち帰りの需要が高まっていることもありそれを踏まえてのキャンペーンの展開です。
 
元々は学校休校措置からくる家庭の食事準備支援として3月10日から3月31日までの期間に実施していた取組みでした。
 
当初は、
 
・お持ち帰りのみ
・牛丼メニューのみ
・12才以下のお子様
・おひとり様3個まで

 
でスタートしその後3月27日からは「年齢制限なし、個数制限なし」と変更していました。それを4月1日からは牛皿のテイクアウトも対象に拡大しての展開です。
 
※個数制限・年齢制限はありませんが、テイクアウト限定価格のため店内飲食だと通常料金になります。
 
実は、このような取り組みは他の外食チェーンも同様に行っていました。
 
・松屋「お持ち帰りワンコインフェア」、500円で「カルビ焼肉定食」「豚肩ロースの生姜焼定食」提供
・和食さと「テイクアウト半額」再開、「天丼」「若鶏の唐揚げ弁当」など平日限定で
・餃子の王将が新型コロナによる休校を支援、250円「お持ち帰り専用お子様弁当」を販売
 
ただ、上記3社はいずれも3月31日でキャンペーンは終了しています。
 
これに対して吉野家は、期間を空けることなく4月1日からも内容を拡大して実施しているのです。(併せてテレビCMも集中投下)
 

 
この取り組みは大当たり。
Twitterではお持ち帰りの人気ぶりの報告も上がっています。
 


 

■ 強みを認識し、機会を生かす


 
この仕掛けと行動の速さ、「𠮷野家は変わった」という印象を受けます。
 
2000年代初頭に発生したBSE問題では迷走を繰り返し、後発のすき家にリーディングカンパニーの座を明け渡していたころと比べると、その展開の速さに驚きます。
 
そのカギは2018年1月に外部から招へいした常務の存在にありました。日用雑貨を製造・販売するプロクター&ギャンブル(P&G)出身の伊東正明常務です。
 
伊東常務は「コア&モア戦略」を掲げました。
 
これは客層と行動特性の分析から吉野家の持つ強みを伸ばすことと弱みを補うことを同時に進め、また機会を生かす戦略です。
 
※吉野家の強み・・・男性ビジネスパーソン、年配層が多いこと
※吉野家の弱み・・・テイクアウト、女性が少ないこと
※顧客の行動特性・・・店内は男女比8:2でもテイクアウトは5:5であること
※外部環境・・・健康志向の高まり、女性の社会進出の傾向があること

 
この取り組みが当たり2019年3月から直近の2020年1月まで11カ月連続で前年同月を上回る売上を記録しました。
 
それに伴い2020年2月期は売上高2150億円(前期比6.2%増)、営業利益36億円(前期は1億円)と増収増益を見込んでいるとのことです。
 
吉野家、P&G出身役員が変えた「牛丼の売り方」(東洋経済オンライン)

 

■ 戦略の基本に忠実な意思決定と、スピード感


 
さて冒頭のお話に戻ります。
 
𠮷野家は「機会」を逃さない、スピード感のある企業になったという印象を受けます。
 
今回の新型コロナウイルスの影響で外食産業は大打撃を受けています。
 
そうした逆風の中で吉野家は自社のリソースの活用と展開を考えたのだと思います。
基本はやはり「SWOT分析」でしょう。
 
強み・・・テイクアウト部門がある
弱み・・・女性客の少なさ、家族連れ客の少なさ
機会・・・内食、中食需要の高まり
脅威・・・外食自粛の動き

 
戦略の基本は「機会に強みを投入」です。つまり、
 
・内食、中食需要の高まりがある機会に、テイクアウト部門の強化を図る
 
が導き出せるはずです。
 
もちろん同業他社、またはほかの外食産業でも同じ結論は出せます。だからこそもう一つの強み、つまり「スピード感のある意思決定」を武器にスピーディに展開したのだと思います。
 
今後他社も同様のキャンペーンを展開するでしょうが、マーケティングの基本である「先行者利得」は𠮷野家にもたらされることになりました。

先行者利益は、「先発優位」とも呼ばれ、新たな市場にいち早く参入したり、新製品をいち早く導入したりすることにより得られるメリット(利得)をいいます。
 
具体的には、時間面で競合他社に先じることによって、顧客をいち早く獲得して「参入障壁」を築けたり、価格競争をせずに比較的高い価格で販売できたり、また今後の規格面や技術面などで主導権を握れたりします。
(i Finance「先行者利益」より)

 

■ 外部環境を受け入れて考える


 
𠮷野家の行動力に学ぶ点があるとすれば以下の3点だと思います。
 
・外部環境を受け入れる
・できないことを嘆くのではなくできることで行動する
・弱みや脅威ではなく強みと機会を考える

 
今回の新型コロナウイルスの影響による外食自粛を「内食、中食需要の高まり」と捉えられるかどうか、そして行動を起こせるか。
 
この状況でも伸びているまたは維持できている企業があるという事実。
 
「わが社は何を売っているのか?」
 
考えろ、考えろ、考えろ。
 
今の自社の仕事の進め方が通用しない外部環境だとしたら、思考と行動を変えて対処しないといけないと思います。
 
そしてそのキーファクターは、意外に単純なことだったりするかもしれません。

 
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