3月に入りました。月間計画で「良い週、悪い週」を考えて数字を組むように年間計画でも季節指数で「良い月、悪い月」で数字を組み立てるとするならば、3月は年間でも平均よりも下がる月とされています。
その大きな理由としては、
・移動の季節であること
・いろいろなことで区切りの月でバタバタすること
・行事関係の多い月であること
などが挙げられます。
厳しいことが予想できるわけなのでその対策を練る必要があり、まずは「どうやって集客するか」を考えることでしょう。
しかし、間違ったことをしていては期待する結果は得られないものです。
間違った戦略立案は、間違った答えを導き出す
あるお店の営業会議において競合他店対策を議論していたときのお話です。
自店商圏の競合店舗は3店舗(自店含めて4店舗)で、概況は次のとおりです。
・4店舗とも市内中心部から伸びる同じ主要幹線沿いに立地
・自店から近い順にA店、B店、C店とすると、自店が市内中心部から一番遠くC店が一番中心部に近い
・稼働が最も高いのはC店であり、以下自店→A店→B店の順位である
このような状況での会議のテーマは「どうすれば市内中心部からの客がC店で止められている状況を回避して自店まで来てもらえるか」となります。そして出た案としては、
・C店の折込チラシ配布日には自店もチラシを出し、少しでも落ち込みを回避するとともにC店の集客力を下げるようにする。
・営業スタイルをC店にあわせて、自店にも目を向けてもらうようにする。
・C店の周辺を中心にポスティングをする。
というものでした。
確かにC店からお客様を20人でも取り込めれば差し引きで40人分の差を縮めることができます。こうしてみると「C店に照準を合わせる」ことは効率が良いように思えますが、実はそうでもないのです。
物事には「基本」や「セオリー」というものがあり、基本やセオリーに沿って行動すると効率よく結果が得られるとされています。
そして今回のような「競合店対策」においても基本やセオリーがあり、次のような考え方で行動すべしとされています。
①上位店舗には楯突かない、自社よりも下位店舗をターゲットにする。
②上位店舗とは差別化を図る。
③そもそも上位店舗は競合として考えない、競合しないことを相手に伝えることで競争を回避する。
これらのセオリーにはその根拠となる戦略論があります。①は「足下の敵攻撃の原則」、②はポジショニング戦略で言う「チャレンジャーの戦い方」、③は競争の戦略でいう「防衛戦略の要“約束”」です。
戦略を立てるときは、まず基本を押さえよう
①上位店舗には楯突かない、自社よりも下位店舗をターゲットにする。
「上位店舗は自店よりも何かしらの魅力がある」から上位でいられます。
自店よりも魅力があるところから客を奪うのはとてもパワーがいることであり、それよりも自店より魅力が少ない(からこそ下位に甘んじている)相手から奪うほうが、効率が良いはずです。
また「自店より下位だけを見れば、自店が最上位なので客を奪われにくい」ともいえます。これが「足下の敵攻撃の原則」です。
②上位店舗とは差別化を図る。
次に自店は4店舗中2番手(ポジショニング戦略では「チャレンジャー」と呼びます)につけています。
だいたいにおいてNO.1店舗はその店名などにブランド力があり、「客は、中身が同じならばブランド力のあるほうに行きたがる」傾向があります。
つまり2番手のときは上位店舗と同じことをしていては“ブランド力”という点で遅れを取り負けてしまうので、「上位店舗にはない魅力を持つ、一味違った店舗ですよ」とアピールする必要があるのです。
これを一般に「差別化戦略」と呼び、チャンレンジャーの基本的な戦略とされています。
③競合しないことを相手に伝えることで競争を回避する。
また、一般的に攻撃を受ける(シェアを奪われる、ターゲット設定されているように感じる)と反撃を仕掛けます。
上位店舗に自店が攻撃対象にされると、前述の①のとおり力の差で負ける可能性が高くなってしまいます。
そこで自分たちよりも上位の店舗に対しては「ウチはあなたを敵とは思っていませんよ、私たちの敵は別ですよ」というメッセージを発することで、自店を攻撃対象から外すように仕向けるのです。
具体的には商圏エリアの宣言に上位店舗を含めない、上位店舗のシェアを奪わずに下位店舗からのみシェアを奪うような施策を打つ、などです。
これらの考え方を今回の営業会議に当てはめて考えると、出された案すべてが戦略の基本・セオリーとは真逆の施策になっていることがわかります。
・C店の折込チラシ配布日には自店もチラシを出す
→直接上位店舗と競争しようとしている
・営業スタイルをC店にあわせてみる
→差別化戦略ではなく同質化戦略となっている
・C店の周辺を中心にポスティングをする
→C店のシェアを奪おうとしている
すべてにおいて基本やセオリーに忠実に行動することが必ずしも成功する施策になるとは限りません。
しかし、闇雲に施策を打って出るよりも基本やセオリーに則って行動するほうが、成功の確率は高くなりますよ。
(了)