株式会社 高尾 倒産(民事再生申請)
 高尾
2022年5月31日、P業界に激震が走った。

パチンコメーカー株式会社高尾による民事再生手続きの申請とそれに伴う東京地裁の監督命令の発令である。

負債金額は66億7996万円とのことで、一般的に大型倒産案件とされる負債総額10億円超を大きく上回った案件となった。

なお参考までに2021年度中の負債1,000万円超の倒産件数は6,030件、うち10億円超の負債での倒産は171件、全体の約2.8%でしかない。
東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」より)

以下、5/30付帝国データバンクの倒産・動向速報記事の抜粋を記載する。

(株)高尾(資本金1200万円、名古屋市中川区中京南通3-22、代表内ケ島隆寛氏ほか1名、従業員124名)は、5月30日に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日付で監督命令を受けた。

~中略~

当社は、1950年(昭和25年)創業、79年(昭和54年)12月に法人化した遊技機の製造業者。自社開発によるパチンコ機器の製造を主体に、販売済みの同機器のリユースも行っていた。著名なアニメなどを題材としたシリーズを手掛け、代理店などを通じて全国のパチンコホールに納入し、近時ピークの2002年12月期には年売上高約240億8300万円を計上していた。

しかし、製品開発などで借入が膨らみ収益面は低調であったうえ、2018年には当社の製品に不具合が発生し同製品の下取りなどを余儀なくされたほか、同年10月には当時の代表が事件に巻き込まれ大きな話題となった。近時は新型コロナウイルスの感染拡大によるパチンコホールの営業自粛などもあって、パチンコホールが設備投資を手控えたため、受注は伸び悩み傾向が続き、2021年12月期の年売上高は約47億9100万円に落ち込み、3期連続で欠損計上を余儀なくされていた。

その後も受注に回復は見られず、資金繰りはひっ迫し、先行きの見通し難から自力での再建を断念、今回の措置となった。

~後略~

帝国データバンク「倒産・動向速報記事 株式会社高尾」

 
さてこのニュース自体は1週間前のことであり各専門家、業界関係者からも意見や今後の動向予測などの情報が飛んでいるので、このニュース自体を詳しく知りたい方はそちらをご覧いただきたい。

【YouTube】高尾が民事再生法の申請 人気低迷のパチンコ次はメーカーの倒産RUSHに? クセのあるパチンコメーカー高尾の機種を振り返る
https://www.youtube.com/watch?v=AGgfkVcjLVI&ab_channel=%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%B3

【YouTube】【速報】ぱちんこメーカー高尾倒産(字幕なし)
https://www.youtube.com/watch?v=LWOW55jfWHk
【悲報】パチンコメーカー高尾、倒産!民事再生法の適用へ
http://suzusoku.blog.jp/archives/40202714.html
他にもいろいろヒットするのでGoogle先生に聞いてみるとよいだろう。

今回のコラムはこの事件を契機に、
・はて?企業が倒産するとはどういったことなのか?
・はて?倒産するとどうなるのか?
・倒産、破産、民事再生、会社更生、いろいろあるけど違いはあるの?
といった「企業が幕引きを図る手法」を、会社法その他の定義に沿って確認したいと思う。

どちらかというとパチンコ業界ニュースへの考察というよりは「倒産の、法律での定義の学習」という趣になる。

興味のない方も後学のために、知識向上のためにと一読していただきたい。

■ 倒産とは?

 倒産
Q. 倒産とはどういうこと、どういう状態のことを指すのだろうか。

A. 倒産って、会社がつぶれることでしょ?

Q. では会社がつぶれるとは?

A. もう仕事がない、社員は解雇、会社の財産をカネに換えて借金している主体に返して会社は解散する、なんかじゃないかな?

これらは間違ってはいないが、正しくはない。

倒産=会社がつぶれることではないし、ましてや解散することも絶対ではない。

もちろん倒産してからの方向性の一つにこれらは含まれるが、ほとんどの会社は倒産後何らかの再建策を進めて再生への道を進むことになる。

実は日本において「倒産」という法律用語はない。

会社が通常の企業活動を停止することで債権者(カネを貸している立場)が債権(貸しているカネや、売掛金など)の回収困難になった状態を総じて「倒産」と言っている。

倒産を逆の立場、すなわちカネを借りている立場でいえば「事業において、支払いが不能となった状態」のことなのである。

そして日常の俗称、総称として「倒産」という用語を使用しているがその中身は様々で、その後の進め方によっていろいろな言い方がある

倒産状態とは、
① 民事再生を申請した段階
② 会社更生を申請した段階
③ 破産を申請した段階
④ 特別清算を申請した段階
である。

■ 実際の倒産の前に、「事実上の」倒産という状態もある

 約束手形

さらにこれらの処理に進む前には「事実上の倒産」として約束手形の不渡りもある。

約束手形とは「○○日に△△万円を支払いますよ」と約束して証書を発行するもので、これは企業の信用(この企業にはカネを貸しても、支払い受け取りを待っても大丈夫か?を銀行が保証すること)に直結する。

これは実に恐ろしいもので、たった一回でも不渡り=支払いができないと銀行はその情報を金融機関で共有(全国銀行協会に報告)するので新規の融資は事実上不可能となり、さらに約定上これまでの手形金額全額の回収を要求する。(期限の利益の喪失

こうなると資金繰りは一気にひっ迫するであろう。

2回目の不渡り発生は時間の問題と言え、「6か月以内に2回の不渡り」となれば銀行取引の停止となりすべての取引を現金のみで行わなければいけなくなるので、事業の継続はかなり難しく「事実上の倒産」となる。

そしてちなみに今回の(株)高尾の場合はこの「事実上の倒産(手形の不渡り)」は発生していない。発生する前に(迷惑をかける前に)自らの手で幕引きを図り、その後を円滑に進めようとしていると考えられる。

■ 倒産後の進め方の違い

 倒産の進め方
ここからは上記①~④の手続きを簡単に見ていこう。

1.民事再生

2000年に施行された比較的新しい法律で、現在の経営陣による事業の継続を志向した会社整理手続きであることが特徴。(DIP=Debtor In Possession型民事再生手続)

いちおう現経営陣が経営権を喪失し管財人や保全管理人が新しい経営陣を指名して再生を行う管理型民事再生手続きもあるが、こちらは少数派である。

裁判所に民事再生の申し立てを行い、決定が下れば再生手続きがスタートする。

原則的に「再生」を志向しており、新たなスポンサーを探すと同時に債権者との交渉で債権の減額やリスケジュールなどを行う。

2.会社更生

会社更生は会社更生法に基づく処理で株式会社のみに適用、そして大きな時間とコストがかかるので比較的大企業に向いた処理手法である。

また民事再生と違い、会社自身の経営権や財産の処理処分権を喪失し、代わりに更生管財人が会社の財産すべてを管理することになる。つまり現経営陣はその経営権を失うのである。

通常の企業存亡案件、つまり一般的に言う倒産状態では上記「民事再生」か「会社更生」のどちらかの手法が使われる。よって「3.破産」と「4.特別清算」はほとんど行われないが、一応確認しておこう。

3.破産

債務者(借りている主体)から債権者(貸している主体)への債務弁済が不可能となったときに、「これ以上の事業継続を望まない」と判断した場合に行う手続きである。この時点で上記2案(民事再生、会社更生)とは違うことがわかる。

破産を申し立てた時点での全財産を換価(カネに換えること)し、債権者に弁済して終了する。もちろん会社は解散する。

企業ではなく個人における「自己破産」はこれに含まれる。

4.特別清算

破産同様、債務弁済不能となった時に事業の継続を望まず、財産を換価して会社の解散、終了を考える手法である。破産との違いは株主および債権者の同意を必要としている点と、財産処分管理者を会社で決めることができる点である。(破産では裁判所の選任による)

■ 民事再生と会社更生、どちらを選ぶ?

 民事再生と会社更生
会社が存亡の危機に陥り、それでも事業継続の意欲がある場合は民事再生か会社更生かを選択することになる。

民事再生なら現経営陣による再生を進められるが、反面、その推進に強制力が弱い。

会社更生では現経営陣の退陣が必須だが強制力を持って進められる。ただし費用がかなり高額だ。

総じて中小企業では民事再生を選択する例が多い。上記メリット/デメリットを考えても現経営陣がそのまま、という点を重視するからだろう。

できればこのような事態に陥りたくはないが、パチンコ業界では大企業は数えるほどしかないので、もしもの時は民事再生を選択となるはずである。

■ (番外編) 黒字倒産に陥らない!

 黒字倒産
ところで「黒字倒産」という言葉を聞いたことがないだろうか?

「黒字なのに倒産?」
「倒産って、払えないから倒産でしょ?」

このように思った方もいるかもしれないので最後に簡単に解説しておこう。

まず「黒字」というのは損益計算書上で利益が出ている状態をいう。

以下に簡易的な損益計算書を掲載する。

 損益計算書

これは一カ月での損益計算だとして、
・売上1億5000万、粗利3千万(粗利益率20%)
・最終利益は700万(当期純利益率4.7%)
となって黒字経営ができている。

しかし損益計算と実際のカネの動き(キャッシュフロー)は違うのだ。

たとえば、である。

売上1億5000万を計上しているがそれは請求書ベースであり実際の入金が3か月後だったらどうなるだろう?すべてとは言わないが、その半分で実際の入金がなかったら?

原価に含まれる材料費や販管費(人件費も含まれる)の支払いは待ってはくれない。

営業外費用=借入金の金利支払いも待ってはくれない。

さらに特別利益に計上した3千万、これは土地の売却だったとしよう。これも実際の入金は半年6回に分けての入金だったら?

総じて「実際の入金は遅れがちだが、実際の支払いは期日通り」なのだ。

貸借対照表に記載される資産のうち流動資産(1年以内に現金化できる資産)が潤沢ならばそれを使用することで乗り切れる。

しかしこの貸借対照表の流動資産でも、例えば現金/預金が少なくて棚卸資産=在庫が多いことで流動資産が多いという場合は非常にまずい。1年以内に現金化できるとしても、それが今すぐ、支払期日までにできるとは限らない。

結局貸借対照表上で流動資産が多くても、損益計算書で黒字であっても、「現金/預金」がなければ支払い不能になって「債権者への支払い困難」となり事実上の倒産に追い込まれてしまうのである。

逆に赤字であっても現金/預金が潤沢であれば支払いは可能だ。

要は「企業が倒産=存続不能」に陥るのは支払いができなくなった時であり、それを乗り切れるなら赤字でもどうとでもなる。(ただし赤字が続けばいずれは現金/預金も底をつくのでダメなのだが。その場合は新規融資を受けて現金/預金を増やそうと考える。)

■ まとめ

 まとめ
今回は株式会社高尾の民事再生手続き開始から「企業の倒産」というものを考えてみた。そのついでに黒字でも倒産することがあることを解説した。

一般的にパチンコ店の店長は売上と原価(景品金額)、そしてそこから計算される粗利益(財務用語では売上総利益という)の管理を任されている。そして最近はその先の販管費(機械代、人件費、光熱費等の諸経費)のコントロールから営業利益を管理する例も多いと思う。

それでもキャッシュの動き(キャッシュフロー)と損益計算の違い、財務バランスを見る貸借対照表を読めるようになってほしいと思う。最終的な利益の計算は経常利益と最終の当期純利益が重要であり、さらにキャッシュの動きと財務状況に関する知識も企業経営では必須だからである。

企業が倒産するのはキャッシュが底をついたから。

そうなる前に、そうならないように財務の知識を増やしてほしいと思う。

■ 利益と稼働を両立する考え方


-稼働を上げるには、出さなければいけない
-利益を上げるには、シメなけれないけない

この思考は間違っています。
アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社では一貫して「利益を増やせば、稼働は伸びる」とお伝えしています。

なぜそう言えるのか?
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