皆さんこんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。
「計数管理の研修や解説はパチンコばかり、パチスロの計数管理も学びたい」、こういう声にお応えして今回、記事を書こうと思いました。
パチンコに対してパチスロは管理項目が少なく、またメンテナンスにおいてもパチンコのように多岐にわたるものではなく設定を変えることしかできません。そのため数値的なことや計算よりも、対処療法的に当日の営業結果から翌日の内容を決めるお店が非常に多いです。
パチスロは設定が6段階ありますが、現状ほとんどで設定①の出玉率が98%前後あります。このため「設定①しか使えない」と考えてしまうかもしれません。
しかしこれは間違いです。パチスロは設定を組み合わせることで、そして設定②以上を使っていくことで利益を増やせるのです。
今回のWebセミナーではパチスロにおける計数管理の基本を理解し、それを設定配分に生かして業績=IN枚数と利益を向上させていただければと思います。
今後の連載は以下のような内容で更新してまいります。
(基礎編) 計算編
目的:パチスロ計数の用語と計算式、それぞれの関係性を学び、そこから設定配分から求められる利益の計算ができるようになる。
【第1回】「出玉率の計算」:出玉率と割数の違い、加重平均という計算 (4/15 UP)
【第2回】「出玉率1%の変動コイン粗利」:出玉率1%で変動するコイン粗利を理解する(4/30 UP)
【第3回】「損益分岐出玉率」:損益分岐出玉率の計算式を理解する(7/4 UP)
【第4回】「利益の計算」:コイン粗利と損益分岐出玉率から利益を計算する(9/11 UP)
【第5回】「設定配分の計算」:設定の組み合わせで変化する割数、利益、IN枚数を計算する
【第6回】「営業計画達成」:計画している割数から要求される出玉率を求める
(実践編) 設定投入編
目的:設定の投入を変えることで業績が向上することを理解する。
【第1回】パチンコもパチスロもゴールは同じ、しかし調整手法は違う (4/16 UP)
【第2回】顧客ベネフィットは新台やイベントではない、設定である(6/4 UP)
【第3回】高設定を使うには(7/12 UP)
【第4回】強みを伸ばすのではなく、弱みを補う設定を優先する(12/31 UP)
【第5回】設定管理におけるKGI、CSF、KPI
【第6回】遊技機とイベントに頼らないパチスロ営業をする
※連載の順序、内容は変更する場合があります。
※基礎計算編と実践設定投入編は同時並行で更新していく予定です。
それでは基礎編第1回、出玉率について学んでいきましょう。
■ 出玉率と割数の違い
出玉率と割数の違い、判りますか?どちらも比率を表す指標であり出方を示していますが、計算式の中身が違うので意味も違ってきます。
まずは計算式の確認です。
出玉率=セーフ÷アウト(×100)
出玉率はその名の通り「遊技客が打ち込んだ玉(コイン)の何倍の玉(コイン)を出したか、出た玉の比率」を示しています。
割数(※景品割数)=景品玉÷売上玉(×10 or ×100)
割数は「遊技客が借りた玉(コイン)の何倍の玉(コイン)が交換されたかの割合」を示す指標で、歩合で表示するなら×10、百分率で表示するなら×100とします。(例えば歩合表記の9.8割というのは百分率の98%と同じ)
出玉率は打ち込んだコインすべてを基準にしてその何倍が遊技機から払い出されたかを計算します。
これに対して割数はその打ち込まれたコインの中から遊技客が借りた(売上の上がった)枚数を基準にして、その後の遊技結果からどれだけのコインが景品として交換されたかの比率を計算しています。
なお、パチンコ雑誌等で「機械割」と記載されているのは「出玉率」です。
■ 出玉率が98%なら割数は9.8割?
「出玉率が98%なら割数は9.8割になるのでは?」
こう考える方がいるかもしれません。
しかし上図の計算を見てもらっても出玉率98.2%で割数は8.80割とズレが生じています。これはたまたまではなく、出玉率と割数は基本的に一致しません。一致するのは出玉率が100%のときだけであり、あとは出玉率が100%から離れるにしたがってその乖離幅が大きくなっていきます。
これは計算式を確認するとわかりやすいでしょう。
景品玉は「売上玉-差玉」で計算できるので「割数=(売上玉-差玉)÷景品玉×10」でも計算でき(これが「機械割数」の計算方法です)、仮にアウト(IN枚数)に変化がなく差玉が増えたときに売上玉に変化がなければ、計算式の分母の大きさの違いにより影響度が全く違うからです。
出玉率では分母が10,000枚なのに対して割数の計算では分母が1,500枚なので、差玉500枚の増減が与える影響が大きく違うことがわかります。
ちなみに「出玉率が100%のときのみ割数と一致」というのは、「割数を百分率表記、×100をしてパーセンテージで表示する場合に割数が100%となる」という意味です。そして出玉率が100%ということは差玉が0枚なので、割数の計算式が「(売上玉-0枚)÷売上玉」となるので必ず100%(10.0割)になるのです。
下図は同じ数値で表記の違いを一覧にしています。
■ 単純平均と加重平均
パチスロの出玉率計算では台別ではなく機種別で管理することが一般的です。
それでは実際に計算してみましょう。下図はSジャグラーガールズSSの設定別出玉率で12台営業を仮定しています。
この場合の出玉率を計算してみます。
設定ごとの出玉率が記載されているのでこのアウトをもとにセーフを計算すると、
設定① : 5,000枚×97.0%=4,850枚
設定② : 5,000枚×97.9%=4,895枚
設定③ : 6,000枚×99.9%=5,994枚
設定④ : 7,000枚×102.1%=7,147枚
設定⑤ : 12,000枚×104.0%=12,480枚
となり、合計は35,366枚です。
続いてアウトは、
設定① : 5,000枚
設定② : 5,000枚
設定③ : 6,000枚
設定④ : 7,000枚
設定⑤ : 12,000枚
なので合計は35,000枚。
以上より「出玉率=セーフ÷アウト×100」なので、
出玉率=35,366枚÷35,000枚×100=101.0457・・≒101.05%
となりました。
簡単ですね!
いえいえ、この計算は間違っています。
この計算は「単純平均」というものであり、そこには台数という重みを考慮していません。
例えば設定①の97.0%という出玉率は6台あるのに対して設定⑤の出玉率104.0%は1台しかありません。設定⑤のアウトが12,000枚で設定①5,000枚の2.4倍あったとしても設定①は6台あるので、この場合総アウトは設定①で30,000枚、設定⑤で12,000枚となり影響は設定①のほうが大きくなります。
「出玉率の計算は総アウトと総セーフで計算する」なので、必ず台数も考慮に入れます。この計算方法を「加重平均」といいます。
改めて台数を考慮に入れて全体の総セーフと総アウトを計算します。
セーフは以下のように、
設定① : 5,000枚×97.0%×6台=29,100枚
設定② : 5,000枚×97.9%×2台=9,790枚
設定③ : 6,000枚×99.9%×2台=11,988枚
設定④ : 7,000枚×102.1%×1台=7,147枚
設定⑤ : 12,000枚×104.0%×1台=12,480枚
となり、合計は70,505枚です。
続いてアウトの合計は、
設定① : 5,000枚×6台=30,000枚
設定② : 5,000枚×2台=10,000枚
設定③ : 6,000枚×2台=12,000枚
設定④ : 7,000枚×1台=7,000枚
設定⑤ : 12,000枚×1台=12,000枚
なので合計は71,000枚。
以上より「出玉率=セーフ÷アウト×100」なので、
出玉率=70,505枚÷71,000枚×100=99.3028・・・≒99.30%
となりました。
■ 感覚で高設定を入れてはいけない
上記のデータからこのお店のSジャグラーガールズSSの割数は9.30割となります。(11.2割分岐、コイン単価2.0円とする)
※出玉率からの割数計算は基礎編第4回「『利益の計算』:コイン粗利と損益分岐出玉率から利益を計算する」で詳しくお伝えします。参考までに計算過程は以下の通りです。
ここで「もう少し出したいな」、こう考えたとしましょう。
さらに「ジャグラーはやっぱり⑥を使わないと。設定①を1台減らして⑥を入れても大丈夫だろう」、こう考えたとしましょう。
感覚的には設定⑥が1台増えても「12台のうちのたった1台」ですし、設定①が1台減ってもまだ設定①のアウトは合計25,000枚、設定⑥を使ってもアウトは15,000枚なので影響は限定的に感じます。たった1台ですしね。
では計算をしてみます。もちろん加重平均です。
まずはセーフ。
設定① : 5,000枚×97.0%×5台=24,375枚
設定② : 5,000枚×97.9%×2台=9,790枚
設定③ : 6,000枚×99.9%×2台=11,988枚
設定④ : 7,000枚×102.1%×1台=7,147枚
設定⑤ : 12,000枚×104.0%×1台=12,480枚
設定⑥ : 15,000枚×107.5%×1台=16,125枚
となり、合計は81,780枚です。
続いてアウトの合計は、
設定① : 5,000枚×5台=25,000枚
設定② : 5,000枚×2台=10,000枚
設定③ : 6,000枚×2台=12,000枚
設定④ : 7,000枚×1台=7,000枚
設定⑤ : 12,000枚×1台=12,000枚
設定⑥ : 15,000枚×1台=15,000枚
なので合計は81,000枚。
以上より「出玉率=セーフ÷アウト×100」なので、
出玉率=81,780枚÷81,000枚×100=101.074・・・≒101.07%
となりました。なんと出玉率が一気に100%超えです。
ちなみに割数や利益は上記の「出玉率から割数へ」の計算をすると、
割数 : 10.96割
コイン粗利 : 0.04円
台粗利 : 286円
利益率 : 2.12%
となります。
「ちょっと出そう」と思いフィーリングで設定をした結果、ほぼ利益ゼロになってしまいました。
こうならないためにはしっかりとした計算、割数までの計算はできなくとも少なくとも出玉率の加重平均計算はしておく、できておく必要があるのです。
【今回のポイント】
・出玉率の計算はアウトとセーフ、割数の計算は売上玉と景品玉であり計算目的と意味が違う。
・出玉率は加重平均で計算する。
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