ABC式パチスロ設定のコツというものがある。
これはIN枚数がおおむね5,000枚以下で厳しい環境にあるホールに向けた、新台入替やイベント等のチカラ技ではなく、要はカネをかけずとも業績=利益を向上させることが可能なノウハウである。
ちなみに「概ね5,000枚以下」としているのはこの数値が(株)SUNTAC社のTRYSEMデータにおける平均IN枚数とされていることによる。

自店にこない遊技客を間接的に把握するために必要な市場統計。
しかし、母集団が偏りの大きい統計データでは、その意味が薄れます。
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業界標準データで有名なのはD社のデータだが、これはその導入企業の多くが潤沢な資金力のある大手でありどうしてもその公開データの数値レベルは高すぎる傾向がある。目標としては良くても比較対象としては難しい。
(参考)業界標準(とされる)データについて(2018.9.6)
https://www.ab-c.jpn.com/713
(参考)業界標準データにみる趨勢(流れ)を検証する(2020.6.16)
https://www.ab-c.jpn.com/7031
私は、「平均以下とされる厳しいホールが多い母集団の中の平均IN枚数が、概ね5,000枚」と定義している。そして平均値はちょうど真ん中を示す数値ではなく中央値はもっと低くなるので、この「厳しい状況にあるホールの平均5,000枚」が一つの目指すべき目標になると考える。
ちなみに私が直接関与しているホールで上記IN5,000枚を常時超えているのは2割。私がお世話になっているホールのほとんどが厳しい環境にあることを差し引いても、やはりD社の数値は高すぎると感じる。
さて、この「ABC式パチスロ設定のコツ」を実践することで実際にどのような業績の推移を示すことになるか、事例を紹介しようと思う。
なお、まだ「ABC式パチスロ設定のコツ」をお読みいただいていない方がいたら一読をお願いしたい。
■ 「設定なんて使えない」思考から「設定を使う」思考で稼働&利益、大幅増
まずはこのデータを見てもらいたい。
中部地方 郊外店 20円S 5.5枚交換
2024年7月各種数値
IN枚数 3,500枚
コイン単価 3.32円
コイン粗利 0.65円
利益率 19.65%(8.83割)
利益率は基本的に20%前後を目指していたので19.65%というのは少々低い。ただこのお店は5.5枚交換なので一般的な11.2割分岐(5.6枚交換)ならばその利益率は21.16%となる。
さてごく普通の営業に見えるかもしれないが、実はこの2024年7月は全期間でALL①営業をしてこの利益率なのである。
ABC式パチスロ設定のコツではALL①営業は絶対にしてはいけないこととしている。しかし設定担当者の考えとしては「今の機種は設定①で98%前後の出玉率なので、利益率20%を目指すならALL①以外は無理」だった。
実際に上記の数値からこの店舗の7月の出玉率は98.09%と計算できる。参考までに上記数値からの出玉率計算は以下の通り。
① 出玉率1%での変動コイン粗利
(5.0枚÷5.5枚)×0.2円≒0.182円
② 損益分岐出玉率
{100円+(5.5枚-5.0枚)×3.32円}÷100円×100=101.66%
③ 利益となる出玉率分
0.65円÷0.182円≒3.57(%)
④ 出玉率
101.66%-3.35%=98.09%
確かにALL①で営業することで実績も98%前後の出玉率となっている。
「イベントはする。その際は設定①の打ち替えでごまかす。出てしまったら『お祈りのように』設定①の打ち替えをしてみる。出なかったらもちろん喜ぶ。」
このようなお店は非常に多い。IN枚数5,000枚以下のお店において一番起こってはいけないことが「暴発、意図しない出方」だからだ。だからとにかく抑えようとする。
しかしそもそも設定はALL①なのでこれ以上、下げようがない。だからなんとなく設定①の打ち替えで「やっている感」を出していくが、そこに根拠はない。結局毎月の結果は出たとこ勝負の繰り返しとなる。
約1年前にお話をいただき、
・ALL①ではなく、設定を使うことで利益が増えること
をその根拠とともにお伝えし、1年間実践してもらった結果が次の数字となる。
2025年7月各種数値
IN枚数 4,000枚
コイン単価 3.38円
コイン粗利 0.61円
利益率 18.12%(9.0割)
2024年7月の台粗利は2,275円(0.65円×3,500枚)だったが、2025年7月の台粗利は2,440円と向上した。数字をよく見ると実はコイン粗利と利益率は低下している。つまり台粗利(=月間粗利)が増加したのはIN枚数が向上したからである。
この間、特別なことは何一つしていない。通常行う新台入替は年間予算通りであり、イベントはむしろ減らしていった。変えたのは設定の入れ方、配分のみである。
改めてこの1年間の業界平均データを見てみる。
現在スマスロ導入当初のような人気には陰りが見えており稼働は右肩下がりの傾向を示している中で、この店舗は稼働を伸ばしているという事実がある。しかも昨今は二極化の進展が見られており、一部の高稼働店舗は稼働を伸ばす傾向にあるものの圧倒的多数の中小ホール、そもそも弱い稼働のホールはどんどん稼働が低下している現状にある。
そのような中でIN枚数3,500枚だった比較的弱いホールが稼働を伸ばしているのである。
上記全国データとこの店舗の稼働推移を重ねたグラフは以下のようになる。
注目してほしいのは上記グラフで言えば緑色の曲線、全国比の推移である。全国が低下傾向の中自店は少しずつ稼働を伸ばし、1年前は全国平均の61.0%だったIN枚数が76.6%まで向上し着実に全国平均との差を縮めている。
■ なにをしたか
では、このホールがこの1年間で取り組んだこととはいったい、どのようなものだったのか。
① 設定を使うこと
記載の通りこのホールでは利益率20%を目指すためにALL①営業をしていたが、2024年8月からは積極的に設定②以上の活用を進めた。以下が2025年1月以降の平日における大まかな設定配分となる。
2025年4月まで平日においては設定②以上で40%程度、5月以降は50%を下回ることはない。(逆に言えば設定①は50%未満ということ。)
「設定を使えば稼働があがっていくのは当然のことではないか。でも利益は取れない。」
そう思うかもしれないが、この間の台粗利の推移は以下のようにしっかりと取れている。
ただしやみくもに台数だけ増やせばいいというものではなく、そこにはABC式パチスロ設定のコツを基本に投入場所(台)は慎重に決めていく。
② おススメ機種を止めたこと
このサイトをご覧になっている方には、私の基本的な考えが「イベントは必要ない」ということはご存じかと思う。
簡単に説明すると、「おススメ機種をアピールすることは弊害が大きい」という考えである。
・おススメ機種が出なかった場合(出さなかった場合)、信頼度が損なわれる。
・おススメ機種が出た場合、稼働の偏りを引き起こし高割数にブレやすくなる。
・おススメ機種が「出る」という認識が高い場合、本来のお客様ではない客層が増えやすくなる。(常連様ではなくいろいろなお店のイベントを回遊する客層が増える。)
・おススメ機種がおススメでなくなった時にその機種の稼働が落ちる。(機種に、またはお店にではなく「おススメという告知」に稼働がつく傾向になる。)
このお店が取り組んだことは「特定機種のイベント(おススメ等)」を止めたこと。そして何も告知をせずに積極的に設定を使っていったこと。
以前は、基本的にALL①営業ではあったが他店同様に機種イベントを行っていた。その際は設定を多少は使っており、出てしまえばその分をイベント機種以外で確保することになるので徐々に設定を使わなくなりいつの間にか形骸化、結局おススメをしても稼働が全くつかない状況になっていく。それでも「やらなければ、もっと落ちる・・・。」と考えてALL①でイベント強行、内容は設定の打ち替えで対応というお粗末なもので、もはや何のためにやっているのかも分からず日々のルーティン作業と化していった。
「何も告知をせずに設定を使って、お客様にわかってもらえるのか?」
こう思うかもしれない。しかしそれこそ誤った固定観念である。
「お店が出すという台(機種)」を打つ客層は、出なくなったら来なくなる。(当たり前。)そうではなく「このお店は出そうな気がする」という期待感を持つ客層を集めるために、告知をしない、してはいけないのだ。
もちろん何もせずに期待感は創れない。だからこそ設定を使っていき、なんとなく座った遊技客の「お?」という喜びを何度も何度も繰り返し感じていただくことに注力するのである。
もちろん「どこに入れるか?」はとても重要で、ABC式パチスロ設定のコツを基本として考えていく。
③ 平日と休日のメリハリをつけたこと
「ABC式パチスロ設定ではALL①営業は絶対にしてはいけない」としているが、それは平日においてのみ。平日と休日ではその志向は明確に変える必要がある。
・平日は客数が少ないので、客滞時間を伸ばす志向をする。
・休日は平日に出すための原資確保を最優先する。
である。
「そんなことはわかっている。」
誰もがそう言う。しかしわかっていても、その行動が「完全に原資確保最優先」になっているだろうか。
「ジャグラーだけは・・・」
「おススメ機種がないと・・・」
「休日しか来店できないお客様がいる・・・」
「ちょっとこの機種が出ていないので・・・」
このように考えて、結局休日営業でも完全に振り切った内容をできていないことが非常に多い。
「意図と行動(内容)を明確に一致させること」は徹底しなくてはいけない。休日営業の意図は粗利を確保すること、それも最優先であるとするならば、その意図に合致した内容と行動が求められる。
このホールでの取り組み開始時、ABC式パチスロ設定のコツに沿ってALL①営業から設定を使うようになっていくのだが、当初は休日でも設定を投入する傾向にあった。設定を使うこと、考えることの面白さとともにこれだけ使っても割数が高くならないことを実感し、どんどん投入を進めたからである。
平日においてはそれでいい。そして平日においてもっと投入するためにはその原資を確保すべきときが必要であり、それが休日になることも同時に理解しないといけない。
このホールについても当初はどうしても「ジャグラーだけは・・・」、「休日とはいえ…」と言った思考から抜け出せなく、結果的に平日と休日の利益率はほぼ同じで進行していた。
転機は12月。
「明確に年に3回の特別期間としての営業」を強く進言し、この期間にしっかりと利益最優先営業を行った。12月~1月において休日を全力利益確保に振り切っても休日の稼働は落ちるどころか上昇し、その傾向はその後も続いていく。
さらに、余裕を持てたことで平日はもっと積極的に投入するようになり平日の稼働も向上するという好循環を形成している。
繰り返しになるが、この1年間の変化の要因=行動は設定投入の考え方を変えたことだけである。設定投入を変えることで、
・出玉率98%はALL①でなくとも可能、むしろもっと下がる。
・休日は徹底的に粗利確保最優先とすることで平日が向上する。
・休日も、平日に良い思いをした客が来店することで稼働が向上する。
となる。上の2つはABC式パチスロ設定のコツをご覧いただいている方であれば理解できることであろう。しかし3番目=「休日に利益回収をしても休日の稼働が向上する」についてはなぜそうなるのかの解説をしていない。次でもう少し詳しく見ていこう。
④ 景品金額を重視したこと
実は、ABC式パチスロ設定のコツで最も重要なのがこの「景品金額の視点を持つこと」である。
一般的に平日よりも休日は利益率が高い営業を志向する。「休日は客数が多い(稼働が平日よりも高い)ので、多めに取っても大丈夫」という考え方だ。
しかしこの考え方は間違っている。正確には「休日は平日よりも出るから客数が多くなるので、取れる」なのだ。
「何を言っている?」と思うかもしれない。「休日は平日よりも出る?」「出るから取れる?」とはどういうことだ?
このホールの7月度平日と休日のデータを基に確認してみよう。
利益率 → 休日の方が高い
台粗利 → 休日の方が高い
確かに休日の方が出ていないように見える。
しかしこれこそが誤った固定観念である。そもそも「出ないならば」なぜ遊技客は敢えて休日に来店するのか?遊技客は「勝ちたい、出したい」と思ってパチンコを打つ。だから「出そう、出る可能性が高い」と思って来店していることになる。
実は上記の数値は決定的に誤った視点でデータを見ている。
割数は「景品玉÷売上玉×10」で計算する。
たとえば上記で言えば、
平日 5,625発÷3,750発×10=15.0割(28玉交換なら利益率▲33.9%)
休日 5,670発÷6,750発×10=8.4割(28個交換なら利益率25.0%)
となるが、遊技客には打ち込まれた(使用して減らした)玉はわからない。わかるのは目に見える(出ている)景品玉だけだ。
そうすると実は、景品玉は平日5,625発に比べて休日は5,670発なので多くなる。もちろん利益率25.0%なので自分は負けているかもしれないが、他人(ホール全体)は「いつもより出ている」と感じられる。
私は計数管理の研修でよく、このように伝える。
「遊技客は基本的にワガママです。出たら自分のヒキのおかげ、出なかったら店のせいです。」
「これを逆転できたお店が強くなります。」
「つまり『出たらお店のおかげ、出なかったら自分のヒキのせい』と演出できればいいのです。」
改めてこのホールのデータに景品金額を加えて確認する。
休日の方が全体の出玉(景品金額)は平日よりも約100万円多いのである。
自分は出ていなくても他人が出ている状況を見ると、「店は出しているのに自分は出なかった。ヒキが弱かった。」となる。だから休日に高い稼働になるのである。
平日は高めの営業を志向して実際に出る経験をしてもらい、休日は他人が出ることを見てもらう。この繰り返しがお店を強くするのである。
そして稼働と景品金額は明確にリンクすることも重要な視点となる。
多くの店舗管理者が感じていることだが、「割数を高めても(利益率を下げても)稼働に反映しない」ということがある。
実際に、割数(利益率)と稼働の高低には関連性がない。
稼働と割数のグラフの動きが一致していないことがわかる。
しかし稼働と景品金額のグラフの動きはほぼ一致する。つまり割数の高低と稼働に因果関係はないが、景品金額の多寡とは関連しているということになる。
あとは自店の目指す稼働に対応した景品金額がいくらなのかを、過去のデータを参考に決定してその金額を出すことを志向していけばよいのである。
■ 誤った固定観念を捨てる
多くの店舗管理者はこう思っている。
・出玉率98%はALL設定①でしか出せない
・設定は①以外使えない
・イベントをしないといけない
・全国的に低下傾向なので稼働を伸ばすことはできない
・利益率が高くなるのは仕方がない
・どうやって抑えるかを考える
上記はすべて誤った固定観念だ。実際に、上記全てを否定して真逆の思考と行動をもって業績=稼働・利益を伸ばしているホールが存在する。そしてその手法(行動)は機械代やイベント開催などの特別予算、投資を全く必要としない。
改めて問う。
遊技客は新台を打ちたいのか?イベントに来たいのか?
違う。「出したい」のである。出そうなお店に行くのである。その「出したい」に応えるためにイベントをしているのならそれは誤ったメッセージになることをよく考えよう。その行動はお店ではなくイベントに客をつける行動であり、イベントがなくなったらその客が離れてしまうということを。
イベント名ではなく新台入替でもなく、「お店に期待感」があればお店のファンになる。イベントのファンであってはいけない。
ABC式パチスロ設定のコツ、興味がある方がぜひお問合せをしていただきたい。ウェブサイトでの文字、文章ではなく実際の生データを基に手法とその実際の効果をお伝えさせていただく。
全国の、業績が厳しく悩んでいるホールにぜひ、この手法で業績向上を達成していただきたいと思っている。