この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認 パチンコ計数管理 」の第29回、2021年10月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。
2019年6月号からスタートした「基礎から学ぶ計数管理」、基本的な考え方は理解していただけましたか?
いよいよこの連載も残り3回で終了となりますので、ここからはこれまでの28回の連載のまとめに入りたいと思います。
まとめ1回目の今回は「計数管理を学ぶ意義」を再確認します。
■ 計数管理 を学ぶ意義と目的
近年の業界を取り巻く状況は変化が著しく勘と経験則に頼った営業は非常に危険です。
この「勘と経験則での営業」から脱却して「論理的な営業」を行うためには計数管理の知識が必要となり、これが計数管理を学ぶ意義となるでしょう。
また、論理的な営業のためには根拠となる様々なデータを収集し、経営判断を行っていく必要があります。
この「様々なデータ」は主にホールコンピュータから出力されるデータであり、これを活用して以下に挙げる5つの事柄を管理することが計数管理の目的です。
① 適正利益の確保
② 不正の早期発見
③ 遊技機メンテナンスの精度向上
④ 計画的な出玉配分
⑤ 出玉ロスの削減
つまり計数管理を学ぶ意義とは論理的な根拠のある営業ができるようになることとなり、その目的は根拠のためのデータを管理すること、となります。
■ 最初にすべきことは、基礎データの理解
上記5つの事柄を管理するためにはデータを活用します。
本来ならば店舗に設置してある遊技機すべてにおいて店舗管理者が実際に状態を確認することが望ましいのですが、設置台数が多いことや確認すべき事柄も目視だけでは限界があることなど現実的には不可能なので、遊技機から出力される信号を基にして遊技機の状態を判断するためにデータを活用するのです。
例えばある機種において稼働が低下したきに、その原因を計数管理の視点から仮説検証ができます。稼働が低下したのは、
① 利益率が高すぎるからなのか
② スタート回転数が低すぎるからなのか
③ 客滞率が下がってきているからなのか
などの分析を繰り返すことで、機種ごとの戦略の精度も上がります。
基礎データは遊技機及び島設備から出力され、その信号は以下の6つです。
① アウト信号(島設備から出力)
② セーフ信号
③ スタート信号
④ 特賞信号
⑤ 確率変動(確変)信号、時間短縮(時短)信号
⑥ 売上玉信号
これら6つの信号を組み合わせたり加工したりすることで様々な計数管理項目(=二次データ)が導き出されます。
■ 覚えるのではなく、理解する
遊技機を管理する項目、営業状態を管理する項目など計数管理では様々な用語があります。
その一つ一つは遊技機および島設備から発せられる上記6つの信号(データ)を四則演算(+、-、×、÷)することによって導き出すものですが、注意したいのは「計算式を覚えても意味はない(身につかない)」ということです。
たとえば出玉率という計数管理項目があります。
計算式は「セーフ÷アウト×100」なのですが特に初学者において「セーフを割る?アウトを割る?」と、計算式の構成要素は知っていても順序で混乱することがあります。
このとき「出玉率とは『どれくらい出ているかを比率で知るための項目』だ。」と理解していれば、「打ち込んだ玉(アウト)の何倍の払い出し(セーフ)があるかを見るのだから、セーフ÷アウトになるな。」と考えることができるのです。
計数管理は暗記するものではなく、活用する(活用して状況を判断する)ためのものです。
用語と計算式を「覚える」という姿勢で取り組むのではなく、意味を「理解する」という姿勢で臨むことで活用度が飛躍的に高まります。
■ 受動的ではなく、能動的に
ホールコンピュータを見ればいろいろな計数管理項目とその数値が確認でき、欲しい情報がすぐに手に入ります。
ただ、そこに表示された数字は単なる結果であり、その数字をどのように解釈し、どのように活用するかを考えることが業績の向上には必要なはずです。
物事は受け身の姿勢では何も残りません。
例えばニュースなども、テレビで流れているのを受け取るよりも新聞で自分から取りに行く方が知識が身につきます。
計数管理も同様です。
ホールコンピュータの数字を見て確認するだけでなく、その数字から見える状況、展開などを考えるというように、能動的に自分から関わる姿勢を取ることで計数管理への理解が深まります。
■ 計数管理 は使うもの
計数管理の知識は覚えているからよい、計算できるからよいではないです。
計数は基礎データでしかなくそれをどう使うか、どう解釈するかの判断のために「使うもの」という意識で理解に取り組んでほしいと思います。
【今回のポイント】
・計数管理の意義は論理的な管理に活用すること
・計数管理の目的はそのためのデータを管理すること
・能動的に接することが理解を深める
・知っているだけではダメ、実践で使う
(了)