マーケティング塾(35):「事業のインフラとケイパビリティ(能力)を構築する(4)」

事業のインフラ とケイパビリティ(能力)を構築する
「 事業のインフラ とケイパビリティ(能力)を構築する」、つまり自社の事業形態の確立とその能力を最大限に発揮するには3軸、すなわち「顧客、自社、事業パートナー」の視点で考え、投資すればよい。

前回は「1.顧客のマネジメント(CRM=カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」での3つの実践プログラムのうちの第二のステージである「特定したターゲットのニーズを満たす」を確認した。

今回は「1.CRMプログラム」の第三のステージ、「ターゲット顧客との永続的な関係を築く」についてみてみよう。

■ 事業のインフラ とケイパビリティからターゲット顧客との永続的な関係を築く


顧客のチョイスコンテクストに合った製品やサービスを提供するためにはもう一つのすべきこと(タスク)が残っている。貴重な顧客との間でより満足のいく、永続的な関係(リレーションシップ)を構築することだ。そのためにはマーケット・インテリジェンス(市場へ働きかける戦略についての情報)取得のための投資が必要である。

(1)マーケット・インテリジェンスを設計する

マーケット・インテリジェンス、つまり「市場戦略情報」はとても重要な概念である。CRMを正しく機能させるには、
・顧客の購買パターン
・デモグラフィクス情報(人口統計学的属性の情報)
・連絡先
等のデータを収集することが欠かせない。

情報を収集し、編集し、コンテクストにあてはめ、分析することによってその情報に「意味」を付与すると、それが組織にとっての「ナレッジ(知識)」となる。

以下に有名なナレッジ活用の例を挙げておく。

● デル・コンピュータ
デルは顧客がどのような製品や機能を選択しているかの情報を蓄積している。これにより嗜好情報が集められ、分析することで様々な製品構成の提案を行い、積極的な価格設定と販売促進が可能となっている。

● amazon.com
顧客がある一つの製品情報をクリックしたとしよう。その際のページ遷移はどのようなものか、どのような情報をクリックする傾向があるのか、また同時にどのような製品を購入するのかなどのデータを収集し分析している。これにより、
・同じ製品、同じような製品での「同時にこれも」の提案
・同じ行動パターンタイプに興味を引くような広告
に役立てている。
また集まった膨大な情報が情報を生むこともよくわかっている。顧客にはamazonは「いろんなおススメが表示されて、とても利便性が高い」と感じてもらい、その裏でamazonはその顧客の行動一つ一つが「新たな情報」となってamazonの「情報的経営資源」となっている。

企業は情報を得たら、それをできるだけスピーディに製品やサービスに反映させなければならない。また、そうすることでデルのように新たな価値の提供で顧客満足を向上させることができるし、amazonのように「積極的に反映させることで顧客満足を勝ち取り、その上に新たな情報資産を手に入れる」ことができる。

なお成功する企業というものは、そのようなナレッジを入手したり活用したりするために事業パートナーとの間で協働ネットワーク構築している。決して「自社だけで構築」とか「独占」を考えるのではないのである。

(2)顧客情報から洞察を得る

「顧客に関する情報は、競争優位を維持するための戦略的資産である」、こう考える企業が増えている。情報を情報として活用するのみならず、「それ自体が“経営資源、資産”」ととらえているのである。(amazonが好例だ。)

そのような企業はデータウェアハウス(DWH、組織の意思決定を支援するために使用される大規模なビジネスデータ)やデータマイニング(雑多な情報を統計学やパターン認識、AI活用により有意な情報に変化させる手法。通常の見方では想像が及びにくい情報獲得が可能となる)といった手法を取り入れて、顧客(≒個客)の行動、ニーズ、消費パターンなどの理解を深めようとしている。

顧客に関するデータウェアハウス(データ倉庫)を構築するためには、まず、どのような情報が必要かを見極めなければならない。何より重要なのは「購入履歴」と「問い合わせの内容」を把握しておくことだ。そこからニーズや嗜好を推し量ることができる。可能であればこの時に年齢、収入、学歴、家族構成、居住地といったデモグラフィック・データも収集すべきである。さらにできれば、
・好みの活動(ゴルフ、テニス、ランニング、ネットサーフ等)
・趣味(音楽的嗜好、読書)
・考え方(保守なのか、革新なのか)
といった顧客の心理面に関するデータもあればなおよい。これらは特にBtoC取引では大いに役に立つ。それは「その対象となる“個”客」にではない。似たような属性の「他の“個”客」においての活用に役に立つのである。

マーケット・インテリジェンス・システムを構築する際にはこれらのデータを様々な情報源、すなわち、
・取引内容(嗜好や購入頻度)
・顧客行動(クリックや検索のパターン)
・本人への質問(顧客プロファイル調査やアンケート)
等から無理なく収集できるような環境を整えることに留意してほしい。

そしてこれらのデータは統合、蓄積をして全社で共有すべきである。

続いてデータマイニングについて。
データマイニングとはニューラルネットワーク(脳の神経細胞による情報伝達の仕組み)やAID分析(多段層別分析)、クラスタ分析(雑多な情報を近似情報で分類して分析)といった高度な分析、統計手法を駆使して雑多で一見無関係な様々な情報から有意なパターンを見出すことである。

データマイニングは高度な手法と言える。これら優れた(且つ、難解な)統計手法を有効に使いこなすことができれば、使いこなした者と使いこなせない者との間に同じデータを前にして全く違う答えが出ることもしょっちゅうである。分析者によって全く異なる結果が出るのである。

■ マーケット・インテリジェンスの活用の注意点

マーケット・インテリジェンス
マーケット・インテリジェンスは様々に活用できる。
・プロモーション、キャンペーン展開において
・積極的なプッシュ型営業において
・顧客の琴線に触れる価格の設定において

しかし、このようなことにおいて十分な効果を引き出すためには、得られた情報の分析がとても大事であるということを理解しないといけない。往々にしてみられるのは、「情報は十分な量があるが、それを分析していない、活用できていない」という企業である。

企業のマーケティング担当(もしもそのような役職がないのであれば企業(店舗)においてマネジメントをする立場にある人間)は、「学習する文化に身を置く知識労働者、すなわち“ナレッジワーカー”である」という自覚を持たなければならない。

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以上で3回に分けて解説した「1.顧客のマネジメント」の内容は終了する。

次回からは「事業のインフラとケイパビリティ(能力)を構築する」の2つめ、「社内の経営資源をマネジメントする」について述べていくこととする。

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