マーケティング塾(34):「事業のインフラとケイパビリティ(能力)を構築する(3)」

マーケティング
マーケティング で重要なことは「事業のインフラとケイパビリティ(能力)を構築する」ことである。そして自社の事業形態の確立とその能力を最大限に発揮するには3軸、すなわち「顧客、自社、事業パートナー」の視点で考え、投資すればよい。

前回は「1.顧客のマネジメント(CRM=カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」での3つの実践プログラムのうちの第一のステージである「ターゲット顧客を特定する」を確認した。

今回は「1.CRMプログラム」の第二のステージ、「特定したターゲットのニーズを満たす」についてみてみよう。

■ マーケティング ニーズを満たす


ターゲット顧客をつかんだら(特定したら)次は彼らのニーズを満たすという仕事に取り掛かる。顧客価値を具体的なベネフィット(利益、恩恵または便益)に変えるのである。

(1) 顧客価値を具体的なベネフィットに変える

企業は「顧客が何を求めているか」を探り出すことに力を入れねばならない。顧客のウォンツをもとにして具体的な顧客の感じるベネフィットを生み出すことが自社の発展につながるからである。

顧客が感じる、彼ら自身のベネフィットの大きさは以下の計算式で表せられる。

顧客ベネフィット=(u+b+r)-(c+t)

u:製品、サービスの効用
b:ブランドの価値
r:リレーションシップ
c:価格
t:時間コスト

∴ 顧客ベネフィット=(得られるメリット+ブランド性+関係性)-(提供金銭+提供時間)

※少々意味が違うかもしれないが、「ベネフィット」を「満足感」と置き換えると理解しやすいかもしれない。

各ファクター(構成要素)の“重み”は顧客ごと、セグメントごとに変わるだろう。例えばBtoB取引において顧客は効用、価格、時間を重視する。そのうち何を重視して決定を下すか、が顧客ごとに変わるということだ。

財務的に厳しい顧客は価格を第一に考え、効用と時間を犠牲にするかもしれない。信用と信頼を重視する顧客はそのものの持つブランド力と共に企業との関係性(リレーション)を最重要視し、その際に価格はあまり気にしないということもある。

そこで企業は(マーケティング担当者は)製品やサービスのポジショニングを行う際に、「ターゲットと定めた顧客」がどのファクタ(構成要素)をどれだけ重視するヒト(企業)なのかを考えなければならない。

おまけだが、そもそも設定するターゲットとする顧客や市場を定義する際に、似た傾向の顧客が集まるように配慮すると効率よく製品やサービスの提供が可能になるであろう。

(2) チョイスコンテクストに合わせた製品、サービスの提供

製品やサービスのポジショニングを決める上では、顧客のチョイスコンテクストを考慮することも求められる。例えばノートPCの購入を考えてみよう。ノートPCの購入者はプリンタや外付けHDDなどの周辺機器との接続に関心を示す。また保証サービスにも興味を示すかもしれない。「クロスセリング」にどれだけ大きなチャンスがあるかは、顧客がニーズの面でどのセグメントに属しているか、どのような用途で購入するのかなどから判断できる。

※「クロスセリング」・・・既存の顧客に追加の製品またはサービスを販売することで売上の拡大を図ること

続いて製品、サービスは以下の3つのタイプに分けられる。

【タイプ1】
その製品、サービスは単独で用いられ、企業にとってそのモノから得られる正味現在価値(NPV)も今後の顧客との継続関係性(リレーションシップ)的価値も高いタイプ。

【タイプ2】
それ自体の正味現在価値は低いが、顧客との関係性を維持、構築することを通して価値を生み出すタイプ。いわば捨て石(ロス・リーダー)的製品(サービス)である。例えばコンサルティング業はその後の継続的な関係を持つために無料で診断を行う。弁護士や会計事務所などでもその後何年にもわたる取引受注のために初回無料のコンサルティングを行う。これらは、その関係性を得ることができれば十分に初期投資の回収は可能である。

【タイプ3】
通常は1回限りの取引でリレーションシップ的価値(継続関係を持つことによる価値)を生み出さない。高価な耐久消費財(テレビ、冷蔵庫、エアコン等)や不動産などが該当する。

製品やサービスは時と共にその役割を変える。上記3タイプは製品やサービスを適切に分類する判断材料として有効だが、その役割は時と共に変化することも理解しておきたい。

例えば、これからは(初回の)無償コンサルティングを提供しても顧客を長く繋ぎ止められるとは限らない。企業がロスリーダー的なサービスとして提供してもそれが後々の利益に結びつけられないかもしれないのである。

このことはつまり、「製品のライフサイクルではなくターゲット顧客のライフサイクルを意識する必要がある」という、着眼点の変更をすべきだと言えよう。顧客はライフサイクルごとに経験も志向も思考も変わる。その結果、求めている(求められる)製品やサービスも異なるのである。

顧客と長期的な関係を築くためには、
1. 最初に価値によるセグメンテーション
2. 次にニーズによるセグメンテーション
3. 最後に解約予測

を行うべきである。

「価値によるセグメンテーション」からは顧客を維持するためにはどれだけの投資をすべきかを、「ニーズによるセグメンテーション」からはどのような製品やサーブを提供するかを考える。締めくくりに「解約予測」をすることによって、解約しそうな顧客とそうでない優良顧客を見極める。

ここで、解約しそうな気配が濃厚でそれでも引き留めておく価値のある顧客に対しては、無償サービスを提供したり価格の割引を行ったりするだろう。しかしこの見極めが重要だ。得てして「どのような顧客にも同等に」無償サービスや割引の提示を行ってしまい、それにより本来引き留めるべき優良顧客への資源配分(時間的、金銭的)が手薄になる事例が多い。

「顧客のチョイスコンテクストに合わせた製品やサービスの提供」とは、製品自体のライフサイクルではなく顧客のライフサイクルに適切に合わせて企業の行動をとるということである。

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次回は「ターゲットの顧客との永続的な関係を築く」について述べることにする。

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