マーケティング塾(26):「チョイス・ボードを提供する」

マーケティング塾(26)
前回までに確認した「チョイス・マップ」は顧客の問題を解決するためのツールだった。他方、今回確認するチョイス・ボードとは顧客の受け取る製品(サービス)の「価値を高める」ツールである。

チョイス・ボードは、
① カスタマイゼーション(特注、受注生産での製品提供)
② カスタマリゼーション(顧客が自分で仕様を決めたり、選択した製品の提供)
③ コラボレーション(共同開発)
の3つの手法がある。

このうち「② カスタマリゼーション」は耳慣れない用語かもしれない。カスタマイゼーションが企業側、すなわち専門家(プロ)が顧客のニーズやウォンツを聞き取り提案した仕様で製品を提供するのに対し、カスタマリゼーションでは「顧客自らが設計し、選択した」製品を企業側が受託して生産することである。

まずはチョイス・ボードの概念について確認し、その後に上記①~③を確認することとする。

■ チョイス・ボードとは

マーケティングとは何か
チョイス・ボードとは主にインターネット上の双方向システムを用いて顧客が自分だけの製品を設計するためのツールである。提示されたメニューから属性、部品、価格、配送オプションなどを選択するとその内容が直ちに製造メーカーに伝わり、調達、組み立て、配送が行われる。

チョイス・ボードを活用することは数々のメリットがある。

<顧客のメリット>

製造メーカーが提示する様々な選択肢から、顧客はその中から最もニーズにあった製品を選択することができる。またこのチョイス・ボード内の選択肢から自分のニーズにあった製品を設計する(組み合わせる)ことができる。

一般的に「製品」は、企業が顧客のニーズを想定し「こういったもの(機能)があるとよいだろう」と考えて製造する。しかしすべての顧客がその通りとは限らない。ある顧客にとって重要な機能が、ある顧客にとっては何ら価値のない機能ということは往々にしてあるものだ。ある機能を必要としない顧客にとってその機能のせいで価格が割高になる、これでは価値が最適とは言えなくなってしまう。

しかしチョイス・ボードの活用によってそのようなミスマッチが起こりにくくなるのである。

<企業のメリット>

企業が製品を開発する場合、基本機能の設計から様々なシーンを想定して新たな機能を追加していくこともある。しかしその製品設計に甘さがあった場合極端な話、返品、在庫の山を築きかねない。そしてまったく見向きもされない製品を抱え込むことになる。

チョイス・ボードがあることで企業は顧客の嗜好を把握することができ、需要予測の精度を高めることができる。

チョイス・ボードはインターネット上に限らない。有名なのはデル・コンピュータである。インターネット上の製品組み合わせだけでなく電話での会話によるリアルタイム発注も行っている。チョイス・ボードは様々な場面で顧客が受け取る価値を高めるのである。

さてカスタマイゼーション、カスタマリゼーション、コラボレーションが製品(サービス)の提供にどのような役割を果たすのかを確認しよう。

■ カスタマイゼーション

チョイス・ボード
インターネットの普及によって個別の需要に応えてのカスタマイズされたソリューションを提供することが可能になった。そして究極のカスタマイゼーションは受注生産、または注文内容に応じた措置や手配に行きつく。例えば、
・医師・・・ひとりひとりに合わせた処方
・建築・・・個別の設計図によるビルの建築
などである。この場合、顧客やプロジェクトごとに内容は千差万別であり、それぞれに対応するには「需要ありき」で動くことになる。特に医師の例がその最たるものであり、医師は患者を診て、聞いて、調べてそれぞれに最適な治療法を提案する。

実は受注生産は、その構想段階で誤りさえなければ大量生産よりもコストを抑えることが可能なのである。というのも、注文を受けてから生産体制に移ることから在庫を抱えるコストというものが発生しない。この在庫コストは、特に製品ライフサイクルの短い業界では重くのしかかるものである。

ただし完全な受注生産というのは、それ専門の企業でない限り難しいと思われる。それでもある程度のカスタマイゼーションは2つの方法で実現は可能だ。

一つ目の方法は、製品の組み立てを店舗もしくは販売業者に委ねることである。これにより在庫を減らしつつ、顧客の要望に沿った「半受注製品」の提供が可能になる。

もう一つは生産者側で半製品を用意し、顧客ニーズが明確になった時点で完成させる手法である。これは需給のアンバランスに対処する方法といえる。

■ 3つのタイプ

3つのタイプ
カスタマイゼーションは適応型、表層型、深層型の3つの形態に分けられる。

(1)適応型カスタマイゼーション

標準製品を用意して、そこに多彩なオプションを組み合わせることを言う。このタイプは実際にはかなり多い。クルマはまさにこれ、である。

(2)表層型カスタマイゼーション

製品そのものを、ひとりひとりの顧客向けにアレンジすることである。これはインターネットの技術により可能になった。Googleの広告はcookieを活用してひとりひとりに違う広告を掲載する。ウェブニュースも過去の視聴履歴から興味の高そうなものを個別に優先掲載できる。

(3)深層型カスタマイゼーション

顧客に気づかれないうちにカスタマイゼーションを施すことである。これはサービス業に多い。顧客データベースを活用し、好みを探り、2回目以降の来店では本人に確かめなくても希望に沿った案内、サービス、提案を行うことである。

■ カスタマイゼーションでの注意点

注意点
現在、もはや製品そのものをを差別化することは至難を極める。すぐに模倣品が登場するので、そこには大きな重要性も価値もない(もちろん、その製品自体が魅力的であることは当然だが)。そこで企業は付加サービスのカスタマイゼーションによって競争優位を手に入れなければならないのである。

技術の発展、インターネットの発展により製品そのものの優位性は一瞬で終わる。だからこそカスタマイゼーション、それもサービス面のカスタマイゼーションに目を向けなければならない。そして実は製品よりもサービスの方が容易でコストもかからない。

ただし気を付けなければならない点が一点、ある。それは「カスタマイゼーションが利益を保証するわけではない」ことである。製品設計が甘い場合、それが原因で顧客不満を招き、返品されるようなことがあれば、他の顧客には見向きもされない特殊な製品の在庫の山を築くことになる。

■ カスタマリゼーション


カスタマリゼーション、あまり聞き慣れない用語かもしれない。カスタマイゼーションが企業側の提案による製品設計プロセス指すのに対し、カスタマリゼーションは顧客主導による製品設計プロセスを指すことになる。有名なところではデル・コンピュータがある。デルのオンライン製悲運構成ツールを用いると顧客自らのニーズに合わせてコンピュータの構成を決め、注文できる。最近ではアップルコンピュータもこれに近いシステムでネット注文を受け付けているが、こちらはアップルが提示するオプションから選ぶのでカスタマイゼーションである。

カスタマリゼーションは顧客主導である。顧客主導の製品設計であるからこそ、価値の提案は顧客自らが行い、その享受を自らが受け取る。カスタマリゼーションはは「その人自身」にとっての最大限の価値を提供することになり、いつまでもその満足度を顧客に与え、忠誠心をこちら(企業側)に向け続けることになる。

カスタマイゼーションとカスタマリゼーションを使い分けることは、「顧客を”個”客ととらえるか、どうか」に違いがある。カスタマイゼーションでは企業側が選択肢を用意するのに対し、カスタマリゼーションは顧客自らが選択肢を用意する。

一見、カスタマリゼーションのほうがより顧客に寄り添った仕組みと思われが(それは事実であるが)、個々に違うニーズすべてに対応するのは並大抵の仕組みでは実現できない。少ない顧客(個客)のみをターゲットとして成り立つ業種、または対応する仕組みを構築した大企業(デル・コンピュータのような)で可能なシステムである。

■ コラボレーション


企業と顧客が積極的に意思疎通を図りながら製品のカスタマイゼーションを推し進めること、これがコラボレーションである。互いに意見を出し合い、より良いものに昇華させるシステムだ。ちょっとした意見交換もあればじっくりと議論することもあるだろう。

今日、このシステムを活用する企業は枚挙に暇がない。企業はその重要顧客、ロイヤルカスタマーからのフィードバックを製品化の際に甥に活用しているはずである。

コラボレーションは特にBtoB企業で多く採用されている。製品売り切り型の企業よりも企業間での連携から最終製品を生産するBtoB企業のほうが、より緊密な打ち合わせと意思疎通が必要だからである。

これは製品生産だけではない。例えば小売業と卸売業が在庫の情報を共有するシステムも一種のコラボレーションといえる。

ここまで3回、チョイス・ボードの内容を確認してきた。チョイス・ボードはこれまでの業務で意識していた/以内にかかわらずに多様な仕組み、システムは活用してきたことだろう。

今後は明確に「この動き方はチョイス・ボードだ」と意識して進めることで、その活用と効果が増大するはずである。

次回は「他社を圧倒する製品(サービス)の設計」最後のピースである「適切なバリュープロポジションの構築」について考えることとする。

 

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